近現代フィリピン・日本関係史

近現代フィリピン・日本関係史

近現代日本・フィリピン関係史本書は、日比両国の研究者が結集して編んだ、両国関係史についての初めての本格的な国際共同研究の成果論文集です。東南アジアで日本と地理的に最も近いフィリピンと日本は、「戦争と平和の20世紀」を通じて、経済交流、移民、安全保障、戦争、戦後賠償、信頼醸成などをめぐって、まさに波瀾万丈の歴史を営んできました。とくに本書から浮かびあがってくるのは、両国関係が、アメリカを筆頭に中国や東南アジア諸国などを含む多国間関係と不可分に営まれてきたことです。この観点から本書では、本格的な学術研究としては初めて、近現代の日比経済交流史を多国間関係の中に位置づける試みがなされています。さらに本書は、第二次世界大戦を間にはさんで一世紀にわたる両国民間の多様な対話の営みを明らかにしています。日本の脅威や領土的野心をめぐる懸念や不信の一方、フィリピンの民族独立の行方が問われた戦前期。極限状況下で信仰や戦争協力をめぐる「信念の対決」が営まれた戦争・占領期。日本の戦争犯罪と戦争の惨禍がもたらした憎悪と不信から、賠償や慰霊などを通じた和解が模索された戦後。この百年の対話の意味、そこに欠けていたもの、未来に向けた課題とは何でしょうか。ある意味ではそれ自体が両国関係史における対話の記録でもある本書から、読者の皆さんが多様な答えを導き出し、日本とアジア諸国の関わりあいの過去と未来に思いを馳せていただければ幸いです。 

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