NY「治安回復」の暗黒面を垣間見せたショーン・ベル「花婿」射殺事件(2006年)に無罪判決

結婚式の直前にNYPDに射殺されたSean Bellさん(左) 結婚予定の女性との間にすでに2児があった続報  2008.4.28. 被害者側は連邦裁判所に提訴の構え NYで抗議行動広がる

2008.4.25 無罪判決にNYの黒人コミュニティのあいだで怒りが広がる

2008.4.25 ショーン・ベル事件で起訴された警官達に無罪判決 判事は友人の証言の信用性を認めず

ショーン・ベル事件CNN特集サイト

下記のブログは2006年11月の記事です

ニューヨークの「治安回復」が語られてずいぶん経ちますが、その陰の面としてNYPD(NY市警察)の住民に対する威圧と横暴があることを見逃すことはできません。その暗黒面を際立たせる事件が、11月25日土曜日の早朝、クィーンズで起きました。私服で張り込んでいたNYPDの刑事たちが、「不審車両」を一方的に銃撃して50発の砲弾を浴びせ、結婚式を数時間後に控えた23歳の黒人青年ショーン・ベルが死亡、友人2名もそれぞれ重体・重傷を負ったのです。

CNN、デモクラシー・ナウの報道をあわせると、当時の事情は、およそ以下の通りでした。

ショーン・ベルは、ストリップ・クラブで友人たちと独身最後のパーティー(いわゆるバチェラー・パーティー)を楽しんだばかりでした。ちなみに独身生活最後のハメを外すパーティーとしてのバチェラー(男性)、バチェロッテ(女性)パーティーはアメリカでは当たり前のお祝いのひとつで、ストリップ・クラブに行くのもお決まりのコースのようです。バチェラー・パーティーの作法?についてアドバイスするウェッブサイトもあるほどです(http://www.bachelorpartytips.com/index.html)。

一方、NYPD側は、クラブに7名の私服警官が張り込んで秘密捜査を行っていたと説明しています。クラブから帰ろうとしてショーン・ベルが友人たちと車に乗り込んだところで、そのうちの一人が武器を携行していると警官のひとりが通報して、すぐに銃撃となった模様です。ショーン・ベルたちは、私服の警官たちを強盗だと思いこんで逃げようとした可能性もあります。銃撃をかわすためだったかどうかは明らかではありませんが、ベルが運転していた車は警官1名をはねました。警官側は50発の砲弾を浴びせました。うち一人は、弾丸のカートリッジを一度入れ替えたうえで全弾丸31発を発射しています。一方、ベルの車から銃器は発見されませんでした。ショーン・ベルは病院に搬送される途中で死亡し、友人2名のうち1名は重体となり、1名は重傷を負いました。NYPDはもう一人同乗者が居たとして、その行方を追及しています。

結果としてNYPDは誤解と偏見により無辜の青年たちを殺傷してしまったわけですが、その背後にある警察の人種偏見にもとづく捜査取り締まりのあり方いわゆるレイシャル・プロファイリングは、黒人やヒスパニック系を中心とするマイノリティ市民を日常的に脅かしています。1999年2月にも同様に私服警官たちに41発の銃弾を浴びせられて黒人青年が死亡する事件がおきています(この事件の被害者の母がデモクラシー・ナウで事件について語っています。

もっと小さなトラブルは数えきれません。

警察に一方的に拘引されたが最後、罪を認めなければ釈放されないので泣き寝入りを強いられている人々も多く、それだけに、この事件はマイノリティ住民の間に激しい怒りの感情を巻き起こしました。しかも、ここで加害者になってしまったNYPD警官の多くもまた黒人・ヒスパニック出身です(この事件で銃撃した警官たちも白人2名だけでなく、黒人2名、ヒスパニック1名が含まれていました)。同じマイノリティ出身の警官がコミュニティを監視し威圧するという植民地状況的な悲劇が広がっているわけです。

 

 

続報リンク

Sean Bell婚約者のCNNラリー・キング・ライブ・インタビュー

http://news.yahoo.com/s/ap/20061205/ap_on_re_us/police_shooting_girlfriend

Sean Bellと共に銃撃された被害者インタビュー(CNN)

http://edition.cnn.com/2006/US/12/05/police.shooting.ap/index.html