アメリカ史研究の現状と課題ー立教大学アメリカン・スタディーズー

なぜ私が・・・の思いもありますが、『立教大学アメリカン・スタディーズ』32号(2010年3月)に講演記録「アメリカ史研究の現状と課題」を掲載させていただきました。
その要旨は、奥村理央さんが次のように大変手際良くまとめてくださいました(『同上』、6頁)。


一橋大学の中野聡氏は、日本におけるアメリカ史研究は、日本国内では縦軸の研究者養成システムが完結せず、アメリカの大学院によって補完・代替されているため変化の風に晒されやすく、日本「独自の視点」の解体につながっていると問題提起した。さらに日本の地域研究者がその関心の対象地域で学位を取得していくことは望ましいことだとしながらも、アメリカ研究の場合は現地の大学院がアカデミックな史上で質量両面において圧倒的な優位性をもっていることが日本のアメリカ史研究に多様で深刻な影響を与えていると警鐘を鳴らした。一方アメリカではアメリカ史研究の国際化・トランスナショナル化の動きが強まっており、そこで見られる海外研究者によるアメリカ史研究への介入を好ましい傾向として紹介した。しかしその傾向は、アメリカのアカデミズムへの海外研究者の包摂という側面と表裏一体であることを指摘し、この動きの両面性を明らかにした。そしてアメリカ史研究の若手は、アメリカ史研究者である以前に歴史学研究者であるというアイデンティティを構築し、意識的に歴史学の他分野、地域研究の他分野を学ぶことが必要ではないかと訴えた。