トーク・ラジオ共和党・ホワイトハウス見限る?(Wポスト 10/25/2006)

デモクラシー・ナウなどのインディペンデント・ニュースがブッシュ政権・共和党批判の急先鋒として今回の選挙で無視できない役割を果たしているとすれば、1994年の選挙で共和党が議会多数を制して以来、共和党の支持基盤として大きな役割を果たしてきたのが、保守系のホストが多数を占めるトーク・ラジオ(ラジオのトーク・ショウ)でした。その風向きが変わったという記事がワシントン・ポストに出ています。イラク戦争や政治腐敗のニュースの連続で共和党支持の保守層のなかに共和党・ブッシュ政権に<お灸を据える>動きが広がっていることの反映でしょう。それは同時に、全体としてのリベラル回帰が起きている訳ではないことを示しているように思われます。

アメリカ中間選挙・直前情勢

2006年アメリカ中間選挙まで2週間。米各種メディアの報道によれば、1994年以来、議会多数党となってきた共和党が、下院で多数を失うことがほぼ確実視され、上院でも民主党が過半数を獲得する可能性が出てきています。全米の選挙情勢を一覧できるサイトとしてはワシントン・ポスト紙の選挙特集サイトが充実しています。州毎に注目の選挙区の情勢を概観できます。言うまでもなく民主党を勢いづかせているのはイラク戦争の泥沼化と共和党多数の連邦議会の腐敗であり、「敵失のリベラル回帰」という面が否めません。共和党の組織的集票力と選挙操作も侮れないものがあり、報道や世論調査にあらわれているよりは僅差の選挙になる可能性もまだ否定できません。ギャラップの世論調査(2006選挙特集)でも、常に世論調査の支持率よりも選挙では民主党の得票は低めに、共和党は高めに出ることが過去の傾向だそうです。 アメリカの政治情勢を追うためには、日本の報道機関が依存している全米のネットワーク・メディア(CNN、フォックス・ニュース、ABC CBS NBC)、大新聞(ワシントン・ポスト、NYタイムズ、LAタイムズなど)だけでなく、独立系ニュース(デモクラシー・ナウ)にも注目する必要があるでしょう。 民主党を勢いづかせている一因として、コメディ・セントラルのデイリー・ショウやコルベール・リポートなどのフェイク・ニュースショウの影響力も侮れません。昨年10月の放送開始以来、共和党・キリスト教右派・保守派を褒め殺し的に徹底的に揶揄する政治諷刺でセンセーショナルな人気番組になっているコルベール・リポートでは、「全米の下院選挙区めぐり」をしていますが、ここのところもっぱら現職議員ではなく共和党現職(たいていは出演拒否)に対抗する民主党系の候補が登場しています。保守派を気取るコルベールにさんざんバカにされるのですが、ここに出演するだけで度量のある人間という宣伝効果が出るようです。 注目の個別選挙区情報(註:英文記事中のGOPとは共和党のことです) ワシントン・ポスト 激戦区直前情勢 Congressional Countdown コネチカット州 イラク戦争・ブッシュ政権支持の姿勢で民主党予備選挙に敗北した現職のユダヤ系上院議員リーバーマンが無所属で出馬 共和党が異例の支援 民主党はIT長者のネッド・ラモン候補 Wポスト デモクラシー・ナウ テネシー州 南北戦争再建期以来初めての南部出身・黒人上院議員の可能性 Wポスト デモクラシー・ナウ  

旧日本軍医フィリピンでの生体解剖の事実を認める

<生体解剖>フィリピンでも 大戦末期 元衛生兵が証言 2006/10/19 毎日新聞 (記事抜粋)第二次大戦末期、フィリピン・ミンダナオ島で、負傷兵の治療などに当たっていた元上等衛生兵曹の牧野明さん(84)=大阪府枚方市=が、仕えていた軍医とともに現地住民を生きたまま解剖したことがあると証言、その体験を基に、近く語り部活動を始める。解剖は軍医が衛生兵の医療実習として個人裁量で行ったとみられる。戦時中の生体解剖は旧満州(現中国東北部)の生物戦部隊「関東軍731部隊」が中国人に行った例が知られているが、専門家によるとフィリピンに関する証言は初めてという。【久木田照子】 この記事はMainichi Daily Newsを通じて海外にも報道され、フィリピンでもトップニュースになったそうです。来日中の第2次世界大戦史研究の第一人者リカルド・ホセさん(フィリピン大学教授)に教えていただきました。衛生兵の医療実習。日本兵の命を救うための訓練にフィリピン人を犠牲にしたわけです。生体解剖を主導した軍医は戦場で自決したとのこと。加害体験を証言し「語り部」となる決意を語る牧野さんに敬意を表します。

岩波講座 アジア・太平洋戦争7 支配と暴力

岩波書店から『岩波講座アジア・太平洋戦争7 支配と暴力』が刊行されました。「大東亜」戦争開始と共に,「南方」へと急激に支配地域を拡大していった日本.解放の論理の下に謳われた「大東亜共栄圏」とは何だったのか? イデオロギー,統治のテクノロジー,経済等の諸側面からその実態に迫ると共に,戦後も各地の脱植民地化・国家建設の過程に根深い影響を与える,支配の再編と連続性の問題を考察する論文集です。中野聡の所収論文「南方軍政と植民地統治―帝国・日本の解体と東南アジア」は、東南アジア植民地解放史観に対するオルタナティヴな史論として、第2次世界大戦によって最初に崩壊した植民地帝国が日本であるという認識の上に立ち、東南アジア占領が日本の帝国をどのように解体せざるを得なかったのかという視点から東南アジア占領史を見直す視点の可能性を検討しました。 岩波書店紹介ページ

「帝国の終焉」とアメリカ

山川出版社から渡辺昭一編『帝国の終焉とアメリカ』が刊行されました。パクス・ブリタニカからパクス・アメリカーナへ。アジアにおける植民地支配の終焉とヘゲモニーの交替に着目し、「20世紀的世界」の歴史的発展過程を明らかにする共同研究の成果論文集です。中野聡の所収論文「イギリス帝国の終焉と東南アジアの国民国家エリート」は、ロビンソンの協調理論を参照しつつ、ASEANをポスト・イギリス帝国における協力者=国民国家エリートの共同体、対外的な協調体制としてとらえるとどのような歴史像が見えてくるかを検討しました。結びの言葉から・・・「欧米中心史観を克服するうえで「周辺」の主体性に注目して帝国やヘゲモニーの制約や限界を語るのはたしかに大事であるが、対象地域の政治エリートの主体性を強調するあまり、彼らが抱える内的・外的制約や限界を見失ってはならない。ロビンソン論文は、独立後の「近代エリート」の政治的困難を予想するなかで、彼らもまた歴史被拘束的な状況の虜なのだという視点を示していた。本章ではこの観点から、「帝国の終焉」後の東南アジア国際秩序が、協調的な開発体制諸国が構成するASEANによって担われたことの歴史的意味を考察することで、アジアの主体性を「等身大」に捉えるひとつの視点を提起してみたつもりである」。 山川出版紹介ページ

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