東アジア近現代通史第10巻 / 和解と協力の未来へ

東アジア近現代通史第10巻 / 和解と協力の未来へ

冷戦が終わり社会主義体制が終焉を迎え、世界はグローバル化と新自由主義化のもと、アメリカ一極支配の構図が現れたようにみえた。だがその一方で、アメリカ主導のグローバリゼーションへの激しい反発を招くことにもなった。「東アジアの奇蹟」と言われた経済は通貨危機に見舞われ、開発体制の崩壊とともに新たな政治動揺が東アジアを覆った。歴史認識問題も浮上し、アジアの国際関係が緊張感を増していくなか、共同体構想も様々に展開されていく。


中野は通空間論題「アメリカの世界戦略とアジア」を書かせていただきました。


アメリカの世界戦略とアジア
(梗概)「アメリカ衰退論」を裏切って、アメリカは覇権国として冷戦を乗りきり、冷戦後も、「唯一の超大国」として今日に至っている。そして「唯一の超大国」としての世界戦略のなかで、東アジアは、アメリカが想定する地球規模有事の「二正面作戦」のひとつの正面であるとともに、軍事的覇権の後背地として米軍の「前進プレゼンス」を基地や資金面で支え、さらに経済的覇権の後背地として、巨額の経常収支赤字・財政赤字を出しながら世界経済における中心性を保つアメリカを、モノづくりとファイナンスの両面で支えてきた。その一方、政治的には、東アジアはヨーロッパのようには冷戦構造が解体されずに温存されてきた。
一九九五年にジョゼフ・ナイ国防次官補が中心になって起草した政策文書『東アジア太平洋戦略』第三次報告書は、東アジアにおけるアメリカの軍事的プレゼンスを維持する重要性を謳った。そしてアメリカは、一九九四年の対中国最恵国待遇の更新、一九九六年の日米安保共同宣言などを通じて東アジア冷戦後の国際秩序の流動化を回避することに成功した。しかし、それは東アジアにとって、冷戦構造を当面温存することにほかならなかったのである。