ブッシュ政権の人権侵害に対する刑事告発の動き
アメリカの人権擁護団体のあいだで、ブッシュ政権の対テロ戦争関連の人権侵害を刑事告発する動きが強まっています。一連の連邦最高裁判所判決が、対テロ戦争にジュネーヴ条約が適用されないとするブッシュ政権の判断を否定したことや、11月の中間選挙で民主党が議会多数を獲得したことがある種の追い風になっています。その一方、中間選挙を前に連邦議会/ブッシュ政権は2006年軍法(Military Commission Act of 2006)で、一連のジュネーヴ条約無視を合法化し、さらに対テロ戦争に関連して大統領が認めた場合には、逮捕状・裁判なしの無期限拘留を認め、とくにアメリカ国籍の無い者には合衆国憲法で認められていたはずのhabeas corpus人身保護令の適用も除外するという、ちょっとにわかには信じがたい悪法を成立させてしまっています。そこでアメリカの人権擁護団体Center for Contstitutional Rightsは、ドイツの裁判所にアメリカの戦争犯罪を刑事告発するという手段に訴えました。
法の下の平等と市民権
近代市民社会における「全て人は法の下に平等」の法理における「人」が各国の憲法においてどのように記述され、解釈されてきたかという問題は、国民国家におけるシティズンシップの問題を考えるうで最も重要な主題のひとつです。 合衆国憲法14条第1項は、州が「何人」any personからも「法の平等な保護」を受ける権利を奪ってはならないと規定しており、その限りでは普遍的な平等保護原則を謳っています。しかし同条項の前段が合衆国市民権の規定となっていて「合衆国において生まれたまたは帰化した全ての人は・・・合衆国市民である」としており、さらに「合衆国市民の特権または免除」を奪ってはならないとしているために、権利保護の範囲と国民・市民権の境界の関係性が問題とならざるを得ないのです。 Amendment XIV Section 1. All persons born or naturalized in the United States, and subject to the jurisdiction thereof, are citizens of the United States and of the state wherein they reside. No state shall make or…
フィリピン「反乱罪」追及あいつぐ
フィリピンで2月の政変未遂劇を乗り切ったアロヨ政権による「反乱罪」の追及が厳しさを増しています。「逃亡」していたホナサン元大佐・元上院議員が拘束されました(ホナサン大佐は1986年のピープル・パワー政変劇のきっかけをつくったひとり。国軍改革派のリーダーとしてアキノ政権に対するクーデター未遂を繰り返したことでも追及された過去があります)。 フィリピンの左翼系政治学者として知られるフランシスコ・ネメンゾ博士(前フィリピン大学学長)も「反乱罪」で訴追されました。国軍改革派の若手と懇談したことが、反乱の共謀であるとして告発されたのです。反マルコス運動では最左翼の学者として活躍したネメンゾ博士は、国際基督教大学ICUで教鞭をとり、日本人学生を育てたことでも知られています。近年は共産党・NPAだけでなく国軍改革派の若手将校に国家再生の期待を繋ぐ発言をしていたことでも知られています。このようにラディカルな政治学者がフィリピン大学学長職についたことは、マルコス戒厳令の時代から考えれば隔世の感があり、また、フィリピン市民社会のある種の成熟を示すものとして歓迎されたものです。 いずれにせよ、学者が軍人と懇談しただけで「反乱罪」で告発されるのではたまりません。学問の自由に対しても深刻な恫喝でもあります。憂慮するフィリピン、日本、アメリカの研究者たちが公正な裁判と学問の自由の擁護を訴える請願に署名活動をしています。 ネメンゾ博士自身が「反乱罪」連座についてのステートメントを発表していますので、ここに原文のまま掲載させていただくことにします。
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