宗教戦争のアメリカ(1) ツリー撤去で大もめ
シアトル国際空港のクリスマス・ツリーが撤去され、すぐにまた元に戻されるという騒ぎが日本でも報道されました。この空港のツリーには以前から(恐らくは同じユダヤ教のラビから)クレームがあったらしく、すでに天使の飾りなどキリスト教的な飾りは取り付けられていなかったそうです。
撤去のきっかけになったのは地元のユダヤ教のラビRabbi Elazar Bogomilskyが、ツリーのほかに、同じ時期にユダヤ教で行われるハヌカー祭 《ユダヤ暦第九月キスレブ(西暦の11‐12月)25日より8日間にわたる宮清めの祭り》ゆかりのMenorahという銀燭台を飾って、その蝋燭の点灯式をさせるべきだ、そうしないと提訴するとクレームを入れたのがきっかけだったようです。
関連報道ABCニュースhttp://abcnews.go.com/US/story?id=2715008&page=1
このクレームにびびった空港側がツリーを撤去したところ全米から猛烈な反発・反響が押し寄せました。ラビElazar BogomilskyはGoogleのTop RIsing Search(その日に問い合わせが一番増えた検索項目)になりました。彼は「撤去しろと言った覚えはないし」「今後、訴えることもしない」とすぐに釈明しました。恐らくかなりきつい脅迫まがいの批判が殺到したのに違い有りません。騒ぎになる前に受けたインタビューでは彼は、「誰もが、それぞれの祝祭日の精神をもって祝うべきです(Everyone should have their spirit of the holiday)」と言っていました。しかし彼の問題意識は、所詮はユダヤ=キリスト教の範囲内にとどまるものだったようです。
実はハヌカー祭でメノラを飾り点灯する行事をクリスマス・シーズンのアメリカの公的なイベントのなかに入れていこうとする動きは、以前から広がっていることのようです。
2001年12月には、ブッシュ大統領がホワイトハウスの公邸で初めてハヌカー祭のMenorah点灯のセレモニーを行っています。それ以前にも、カーター大統領が1979年にラファイエット公園というところでMenorahの点灯式に参加していたり、1997年にはクリントン大統領が大統領執務室でMenorahに点灯し、翌年にエルサレムを訪問したときにはイスラエルの大統領とともにMenorahの点灯式に参加したそうです。
ユダヤ系から見ればMenorah点灯をアメリカの公的な風物詩にしてゆくことはエンパワメントの一環という意味があるでしょうし、政治家たちから見れば、ユダヤ系の取り込みという意味を明らかにもっていますし、ここ数十年の間に進んできたユダヤ=キリスト教の提携・融合の動きとも関係しているとも言えるでしょう。このように穏やかな宗教行事の風物詩が政治的に世知辛くなるところが、政治と宗教が不可分に結びついたアメリカの現在を象徴しているとも言えるかもしれません。
ホワイト・ハウス・ウェッブサイト ブッシュ大統領のMenorah点灯式について
http://www.whitehouse.gov/president/holiday/hanukkah/
ユダヤ暦[占い辞典]
ユダヤ暦ユダヤ暦(ゆだやれき)とはユダヤ人の間で使われた暦法である。太陰太陽暦で、太陽暦のグレゴリオ暦と差を明確にする。ユダヤ人はこの暦法をヘブライの月の算出に用いた。それによって読むべきモーセ五書|トーラーを決め、その日に読むべき聖詩を定め、祝日を定め
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