戦争の記憶をめぐる日本・フィリピン関係の光と影(2)

印刷に適したHP版はこちら   忘却への抗議と山崎隆一郎大使の謝罪 中野 聡(一橋大学大学院社会学研究科) (注)本稿は『視覚表象と文化的記憶』所収論文の一部をウェッブ掲載用に改題・改稿したものです  

マイノリティの市民権戦略と記憶の政治

マイノリティの市民権戦略と記憶の政治

公民権運動の時代以後、展開してきたアメリカ合衆国におけるマイノリティの政治は、記憶や歴史認識と深く結びついて展開してきています。まず代表的な3つの集団についてのリンクを紹介しておきます。 1.アフリカ系アメリカ人 1950年代から60年代にかけての公民権運動は、それじたいは、植民地主義や奴隷制に対する謝罪や補償を求めるものではありませんでした。しかし、そこから派生した「歴史の見直し」の動きは、過去に差別/抑圧/虐殺された(民族)集団についての集合的記憶を公的レベルで修正し、保存し、顕彰してゆくパターンの先駆けとなりました。

宗教戦争のアメリカ(2) ムスリム議員 就任宣誓コーラン使用で大もめ

アメリカで初めてのムスリム(イスラム教徒)下院議員として当選したキース・エリソン(Keith Ellison)氏が、1月に連邦議会で行う就任宣誓にイスラム教徒としてコーランを使用する意向を表明して大騒ぎになりました。 就任宣誓といえば聖書(バイブル)の上に手を置いてやるもんだろうが!というのが、保守派からの反発の声です。 興味深いのはエリソン氏に最初にクレームを入れたのが、ロサンゼルスで保守派のトーク・ラジオ・ホストをしているユダヤ系のデニス・プレーガーという人物だったということです。彼は次のように叫んでいます。

宗教戦争のアメリカ(1) ツリー撤去で大もめ

宗教戦争のアメリカ(1) ツリー撤去で大もめ

シアトル国際空港のクリスマス・ツリーが撤去され、すぐにまた元に戻されるという騒ぎが日本でも報道されました。この空港のツリーには以前から(恐らくは同じユダヤ教のラビから)クレームがあったらしく、すでに天使の飾りなどキリスト教的な飾りは取り付けられていなかったそうです。

Extraordinary Rendition (特例拘置引き渡し)問題

ブッシュ政権の対テロ戦争をめぐる人権侵害については映画「グアンタナモ 僕たちが見た真実」で再現されているパキスタン系英国人青年たち(パキスタンから観光でアフガニスタンに入国したところタリバンの支配地区にいたことから対テロ容疑者としてグアンタナモに送られてしまった例(ひとりはアフガニスタンで行方不明になったまま)。シリア系カナダ人で、2002年NYのJFK空港で米当局に拘束され、シリアに送られて10ヶ月以上拘留され拷問を受けたマハール・アラール(Maher Arar)さんなど、数え切れないほどの例が報道されています。レバノン系ドイツ人のハリッド・エルマスリ(Khalid El-Masri)さんは、たまたまアルカイダ系のAl-Masri容疑者と名前が似ていたことから、休暇中にマケドニアの国境警備隊に拘束され、そこからバグダッドをへてアフガニスタンに送られてCIAに拘留され拷問を受けました。この件についてはアメリカでもっとも歴史のある人権教護団体 アメリカ市民自由連盟(American Civil Liberties Union ACLU)が全面的にバックアップしてCIA長官を相手取った訴訟が進行中です。 これらはいずれも令状なしの逮捕、裁判なしの拘留、他国への引き渡しをめぐるもので、Extraordinary Rendition(特例拘置引き渡し)と呼ばれる措置をめぐる問題とされています。ACLUがくわしく事情を解説しています。 ACLU Extraordinary Rendition 裁判関連 http://www.aclu.org/safefree/torture/rendition.html Extraordinary Renditionとは?wikipedia http://en.wikipedia.org/wiki/Extraordinary_rendition ハリッド・エルマスリさん拘留問題 http://en.wikipedia.org/wiki/Khalid_El-Masri

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